地球の総合医をめざし「自然環境医学」という新しい分野を提案
人類の生存と持続可能な開発目標(SDGs)のためには、今や人間の周辺のみならず自然環境全体の健康の維持が不可欠である。
本書では宇宙・地球・生命の起源と進化そして未来を概観し、地球の自然環境のしくみを解説。また、人間の健康状態と病気にあたる自然環境の現状と災害や汚染などを、火山、地震、土砂、気象、大気、水、土・岩石、都市環境などで具体的に俯瞰。そうして「自然環境の聴診器」の著者自身による開発と、自然環境の診断と推移予測手法を紹介する。
自然環境の健康を守る「自然環境医学」とは何か。ヒトの病気にあたる自然災害や環境汚染を極力予防し、また軽減し、事故にあたる人為的な災害や汚染などを防止するということではないか。ヒトの医学でいう「薬による治療」や「手術」、「臓器移植」などの人工的なものは極力避け、自己修復作用、自浄作用などを活かし、自然環境の寿命そのもの(天寿)を全うすることをめざしたい。そのためには、まず自然のしくみを理解し、現状を定量的に把握し、健康状態をモニター(すなわち健康診断)し、その推移・経過観察する。「自然環境医学」は、まだ始まったばかりの分野である。
【目次】
まえがき:自然環境医学の試み
第T編 宇宙・地球・生命の進化と自然環境
第1章 宇宙・太陽系の進化
第2章 地球・生命の進化
第3章 自然環境の変動
第4章 地球と人類の未来
4.1. 近未来の予測
4.2. 長期予測
4.3. 自然環境の過去と未来
第U編 地球と自然環境のしくみ
第5章 地球の構造
第6章 岩石圏(マントル・地殻)
第7章 土壌圏
第8章 水圏
第9章 大気圏
第10章 生物圏
第V編 自然環境の健康と病気
第11章 地球表層物質循環
第12章 火山活動と災害
12.1. 火山活動
12.2. 火山災害
12.3. 火山噴火の時間スケールの見積もり
12.4. 火山噴火の予測と防災
第13章 地震活動と災害
13.1. 地震活動
13.2. 地震の発生回数・間隔
13.3. 地震の発生機構
13.4. 地震のモニタリングと予測
13.5. 地震防災
第14章 河川の氾濫
14.1. 集中豪雨による水害
14.2. 河川氾濫警報と避難
14.3. 今後の治水対策
第15章 土砂災害
15.1. 土砂災害の頻度と事例
15.2. 土砂災害の予測
15.3. 土砂災害の起こり方のまとめ
15.4. 土砂災害の防災・減災
第16章 気象災害
16.1. 気象災害の種類
16.2. 台風
16.3. 集中豪雨
16.4. 気象予測(天気予報の数値計算)
16.5. 気象災害の予測
第17章 気候変動
17.1. 気候モデル
17.2. 温室効果
17.3. 気候フィードバック
17.4. 気候の予測
17.5. 地球温暖化・寒冷化の影響
17.6. 二酸化炭素の地下貯留(CCS)
第18章 大気圏の汚染
18.1. 酸性雨
18.2. 光化学スモッグと四日市ぜんそく
18.3. オゾンホール
18.4. エアロゾル
18.5. アスベスト(石綿)
18.6. PM2.5
18.7. 大気汚染物質広域監視システム「そらまめくん」と大気汚染予測システムVENUS
第19章 水圏の汚染
19.1. 水汚染指標:化学的酸素要求量(COD),生物学的酸素要求量(BOD)と亜硝酸
19.2. 河川水の水質検査:北海道札幌市豊平川の例
19.3. 海域の汚染:三重県英虞湾の例
19.4. 地下水(+土壌)の汚染
19.4.1. 重金属(鉱山排水,カドミウム,水銀)
19.4.2. 有機塩素化合物(テトラクロロエチレンなど)
19.5. 上水と下水の処理
19.5.1. 浄水場での水処理
19.5.2. 水処理凝集剤の働き
19.5.3. 下水場での水処理
第20章 土壌・岩石圏の汚染
20.1. 農地の残留農薬とダイオキシン類:九州水田土壌の例
20.2. 一般ごみの分別と焼却処理:大阪府吹田市の例
20.3. 一般ごみ焼却処理によるダイオキシン汚染:大阪府豊能郡の例
20.4. 一般ごみの処分:ごみ処分場
20.4.1. 北海道札幌市の例
20.4.2. 東京都の例
20.4.3. 近畿2府4県(大阪湾)の例
20.5. 産業廃棄物の処理・処分
20.6. 放射性廃棄物の処理・処分
20.7. 高レベル放射性廃棄物処分の安全評価(未来予測)
20.8. 土壌・岩石圏汚染の今後
第21章 都市環境(インフラ)の劣化
21.1. コンクリートの自然環境での劣化
第22章 人口と食糧
22.1. 世界の人口
22.2. 世界の食糧
第23章 感染症(パンデミック)
23.1. 地球規模での感染症
23.2. 感染症への対策(ワクチン)
第W編 自然環境を定量化する科学
第24章 宇宙・地球科学
第25章 物理学
第26章 化学
第27章 生命科学
第28章 複雑系科学
28.1. フラクタル
28.2. 自己組織的臨界状態
28.3. カオス
28.4. 複雑系科学はどこへ行く?
第29章 総合自然科学・総合理工学
第X編 自然環境のモニタリング・診断・修復
第30章 自然環境のリモートセンシング
30.1. 全地球測位システムGPS
30.2. 地理情報システムGIS
30.3. 電磁波の分類
30.4. リモートセンシングに利用される電磁波とプラットフォーム
30.5. リモートセンシングによる気象災害と大気汚染の予測
30.6. リモートセンシングによる農業調査・自然環境調査
30.7. 地理情報システムGIS による自然環境調査
第31章 地下探査
31.1. 音波探査
31.2. 電気探査
31.3. 地中レーダー
31.4. 放射能探査
第32章 非破壊検査
32.1. 放射線検査
32.2. 音波検査
32.3. 電気検査
32.4. 近赤外検査
32.5. 核磁気共鳴(NMR)検査
第33章 「自然環境の聴診器」の開発
33.1. 携帯型可視・近赤外分光計測器
33.1.1. 分光測色計で地球の顔色をはかる
33.1.2. 携帯型分光測色計の開発
33.1.3. 高速道路工事現場での測定
33.1.4. 携帯型可視・近赤外分光計の開発
33.1.5. 農地(圃場)の土の現場測定
33.2. 顕微可視・蛍光・ラマン分光装置
33.2.1. 顕微可視・蛍光分光装置とウラン鉱物
33.2.2. 顕微可視・蛍光・ラマン分光装置の開発
33.2.2.1. 花崗岩の風化・変質
33.3. 赤外分光法
33.3.1. 減衰全反射赤外分光法(ATR-IR)
33.3.2. 顕微赤外分光法
33.3.2.1. 赤外分光・水晶振動子微小天秤法・相対湿度制御法(IR/QCM/RH法)
33.3.2.2. 粘土への水吸着
33.3.2.3. 水酸化鉄へのフタル酸吸着
33.4. 可視・近赤外分光モニタリング
33.5. 音波スぺクトロスコピー
33.6. 電気インピーダンス・スぺクトロスコピー
第34章 自然環境の時間変化の追跡
34.1. ミニトマトの熟成過程の追跡
34.2. モミジ葉の紅葉過程の追跡
第35章 自然環境の時間変化の模擬実験
35.1. モミジ葉の加熱実験(クロロフィルの減少速度)
35.2. 腐植物質の生成・分解速度
35.3. 岩石風化の律速過程と時間スケール(花崗岩の例)
第36章 自然環境変化の予測
36.1. 物質移動学
36.1.1. 流体の流れ(移流)
36.1.2. 拡散
36.1.3. 地層中の物質移動と環境汚染
36.1.4. 地球物質中の様々な拡散係数
36.2. 反応速度論
36.2.1. 反応次数と速度定数
36.2.2. 反応速度の温度依存性
36.2.3. ウランの沈殿速度
36.2.4. 自然界の1次反応速度定数
第37章 自然環境の修復
おわりに:自然環境医学のすすめ
引用・参考文献
人類の生存と持続可能な開発目標(SDGs)のためには、今や人間の周辺のみならず自然環境全体の健康の維持が不可欠である。
本書では宇宙・地球・生命の起源と進化そして未来を概観し、地球の自然環境のしくみを解説。また、人間の健康状態と病気にあたる自然環境の現状と災害や汚染などを、火山、地震、土砂、気象、大気、水、土・岩石、都市環境などで具体的に俯瞰。そうして「自然環境の聴診器」の著者自身による開発と、自然環境の診断と推移予測手法を紹介する。
自然環境の健康を守る「自然環境医学」とは何か。ヒトの病気にあたる自然災害や環境汚染を極力予防し、また軽減し、事故にあたる人為的な災害や汚染などを防止するということではないか。ヒトの医学でいう「薬による治療」や「手術」、「臓器移植」などの人工的なものは極力避け、自己修復作用、自浄作用などを活かし、自然環境の寿命そのもの(天寿)を全うすることをめざしたい。そのためには、まず自然のしくみを理解し、現状を定量的に把握し、健康状態をモニター(すなわち健康診断)し、その推移・経過観察する。「自然環境医学」は、まだ始まったばかりの分野である。
【目次】
まえがき:自然環境医学の試み
第T編 宇宙・地球・生命の進化と自然環境
第1章 宇宙・太陽系の進化
第2章 地球・生命の進化
第3章 自然環境の変動
第4章 地球と人類の未来
4.1. 近未来の予測
4.2. 長期予測
4.3. 自然環境の過去と未来
第U編 地球と自然環境のしくみ
第5章 地球の構造
第6章 岩石圏(マントル・地殻)
第7章 土壌圏
第8章 水圏
第9章 大気圏
第10章 生物圏
第V編 自然環境の健康と病気
第11章 地球表層物質循環
第12章 火山活動と災害
12.1. 火山活動
12.2. 火山災害
12.3. 火山噴火の時間スケールの見積もり
12.4. 火山噴火の予測と防災
第13章 地震活動と災害
13.1. 地震活動
13.2. 地震の発生回数・間隔
13.3. 地震の発生機構
13.4. 地震のモニタリングと予測
13.5. 地震防災
第14章 河川の氾濫
14.1. 集中豪雨による水害
14.2. 河川氾濫警報と避難
14.3. 今後の治水対策
第15章 土砂災害
15.1. 土砂災害の頻度と事例
15.2. 土砂災害の予測
15.3. 土砂災害の起こり方のまとめ
15.4. 土砂災害の防災・減災
第16章 気象災害
16.1. 気象災害の種類
16.2. 台風
16.3. 集中豪雨
16.4. 気象予測(天気予報の数値計算)
16.5. 気象災害の予測
第17章 気候変動
17.1. 気候モデル
17.2. 温室効果
17.3. 気候フィードバック
17.4. 気候の予測
17.5. 地球温暖化・寒冷化の影響
17.6. 二酸化炭素の地下貯留(CCS)
第18章 大気圏の汚染
18.1. 酸性雨
18.2. 光化学スモッグと四日市ぜんそく
18.3. オゾンホール
18.4. エアロゾル
18.5. アスベスト(石綿)
18.6. PM2.5
18.7. 大気汚染物質広域監視システム「そらまめくん」と大気汚染予測システムVENUS
第19章 水圏の汚染
19.1. 水汚染指標:化学的酸素要求量(COD),生物学的酸素要求量(BOD)と亜硝酸
19.2. 河川水の水質検査:北海道札幌市豊平川の例
19.3. 海域の汚染:三重県英虞湾の例
19.4. 地下水(+土壌)の汚染
19.4.1. 重金属(鉱山排水,カドミウム,水銀)
19.4.2. 有機塩素化合物(テトラクロロエチレンなど)
19.5. 上水と下水の処理
19.5.1. 浄水場での水処理
19.5.2. 水処理凝集剤の働き
19.5.3. 下水場での水処理
第20章 土壌・岩石圏の汚染
20.1. 農地の残留農薬とダイオキシン類:九州水田土壌の例
20.2. 一般ごみの分別と焼却処理:大阪府吹田市の例
20.3. 一般ごみ焼却処理によるダイオキシン汚染:大阪府豊能郡の例
20.4. 一般ごみの処分:ごみ処分場
20.4.1. 北海道札幌市の例
20.4.2. 東京都の例
20.4.3. 近畿2府4県(大阪湾)の例
20.5. 産業廃棄物の処理・処分
20.6. 放射性廃棄物の処理・処分
20.7. 高レベル放射性廃棄物処分の安全評価(未来予測)
20.8. 土壌・岩石圏汚染の今後
第21章 都市環境(インフラ)の劣化
21.1. コンクリートの自然環境での劣化
第22章 人口と食糧
22.1. 世界の人口
22.2. 世界の食糧
第23章 感染症(パンデミック)
23.1. 地球規模での感染症
23.2. 感染症への対策(ワクチン)
第W編 自然環境を定量化する科学
第24章 宇宙・地球科学
第25章 物理学
第26章 化学
第27章 生命科学
第28章 複雑系科学
28.1. フラクタル
28.2. 自己組織的臨界状態
28.3. カオス
28.4. 複雑系科学はどこへ行く?
第29章 総合自然科学・総合理工学
第X編 自然環境のモニタリング・診断・修復
第30章 自然環境のリモートセンシング
30.1. 全地球測位システムGPS
30.2. 地理情報システムGIS
30.3. 電磁波の分類
30.4. リモートセンシングに利用される電磁波とプラットフォーム
30.5. リモートセンシングによる気象災害と大気汚染の予測
30.6. リモートセンシングによる農業調査・自然環境調査
30.7. 地理情報システムGIS による自然環境調査
第31章 地下探査
31.1. 音波探査
31.2. 電気探査
31.3. 地中レーダー
31.4. 放射能探査
第32章 非破壊検査
32.1. 放射線検査
32.2. 音波検査
32.3. 電気検査
32.4. 近赤外検査
32.5. 核磁気共鳴(NMR)検査
第33章 「自然環境の聴診器」の開発
33.1. 携帯型可視・近赤外分光計測器
33.1.1. 分光測色計で地球の顔色をはかる
33.1.2. 携帯型分光測色計の開発
33.1.3. 高速道路工事現場での測定
33.1.4. 携帯型可視・近赤外分光計の開発
33.1.5. 農地(圃場)の土の現場測定
33.2. 顕微可視・蛍光・ラマン分光装置
33.2.1. 顕微可視・蛍光分光装置とウラン鉱物
33.2.2. 顕微可視・蛍光・ラマン分光装置の開発
33.2.2.1. 花崗岩の風化・変質
33.3. 赤外分光法
33.3.1. 減衰全反射赤外分光法(ATR-IR)
33.3.2. 顕微赤外分光法
33.3.2.1. 赤外分光・水晶振動子微小天秤法・相対湿度制御法(IR/QCM/RH法)
33.3.2.2. 粘土への水吸着
33.3.2.3. 水酸化鉄へのフタル酸吸着
33.4. 可視・近赤外分光モニタリング
33.5. 音波スぺクトロスコピー
33.6. 電気インピーダンス・スぺクトロスコピー
第34章 自然環境の時間変化の追跡
34.1. ミニトマトの熟成過程の追跡
34.2. モミジ葉の紅葉過程の追跡
第35章 自然環境の時間変化の模擬実験
35.1. モミジ葉の加熱実験(クロロフィルの減少速度)
35.2. 腐植物質の生成・分解速度
35.3. 岩石風化の律速過程と時間スケール(花崗岩の例)
第36章 自然環境変化の予測
36.1. 物質移動学
36.1.1. 流体の流れ(移流)
36.1.2. 拡散
36.1.3. 地層中の物質移動と環境汚染
36.1.4. 地球物質中の様々な拡散係数
36.2. 反応速度論
36.2.1. 反応次数と速度定数
36.2.2. 反応速度の温度依存性
36.2.3. ウランの沈殿速度
36.2.4. 自然界の1次反応速度定数
第37章 自然環境の修復
おわりに:自然環境医学のすすめ
引用・参考文献